次世代モビリティに向けた適応型保護を実現する乗員状況認識安全技術

自動車業界は現在、大きな変革期を迎えています。ソフトウェア・デファインド・ビークル(SDV)の普及、新たな車室内コンセプトの登場、そして自動運転技術の進展により、乗員と車両との関わり方は大きく変化しています。同時に、安全性能に対する期待もこれまで以上に高まっています。乗員はもはや標準的な着座姿勢に限定されず、車両には現実世界で起こり得る多様な状況への対応が求められています。また、お客様はレギュレーションによって決められた試験での性能だけでなく、日常の複雑な走行環境においても安全システムが確実に機能することを期待しています。

こうした期待に応えるために、安全技術も進化し続けなければなりません。

乗員状況認識安全技術(Occupant Situational Safety)とは、それぞれの状況に応じて保護性能を継続的に最適化するアプローチです。


考慮される要素には、次のようなものがあります。

 ・乗員の体格や着座位置などの乗員状態
 ・衝突の衝撃度や方向などの事故状況
 ・シートレイアウトや利用可能な空間を含む車室内環境

従来のようにあらかじめ定められた設定に依存するのではなく、適応型システムは利用可能な情報を活用し、状況に応じて最適な保護を提供します。

従来の乗員拘束システムは、さまざまな条件下で安定した保護性能を発揮できるよう設計されています。しかし、実際には最適な保護のあり方は状況によって異なるため、一定の条件を前提とした設計には限界があります。例えば、拘束力が不十分な場合、乗員が過度に前方へ移動し、車室内の構造物に接触する可能性があります。一方で、拘束力が過大な場合には、拘束システムそのものが傷害の要因となることもあります。
適応型システムは、こうした相反するリスクのバランスを取りながら、その時々の状況に応じて保護特性をリアルタイムで最適化することを目指しています。

適応型乗員拘束システムは、乗員の体格、衝突の重大度、車室内の利用可能な空間などの重要な要素に応じて作動を最適化することができます。
その中核となる考え方の一つが、利用可能な空間を最大限に活用することです。乗員の動きを適切にコントロールしながら車室内との強い接触を回避することで、乗員に加わるピーク荷重を低減し、傷害リスクの軽減につなげます。

具体的な例としては、以下が挙げられます。

 ・アダプティブシートベルト
   ロードリミッターの設定値を状況に応じて変更することで、乗員に加わる力をより精密に制御します。
 ・アダプティブエアバッグ
   さまざまな衝突条件や乗員との相互作用に合わせて展開特性を最適化します。
 ・プリテンショナー制御戦略
   衝突前または衝突初期段階で乗員の姿勢を整え、システム全体の保護性能向上に貢献します。

これらの技術を組み合わせることで、乗員一人ひとりの状況に応じた、より最適な保護を実現します。

乗員状況認識安全技術を実現する4つの主要技術:

Sensing

センシング

最新のセンシング技術は、乗員の着座位置や姿勢、シートの配置状況、さらには衝突時の挙動に関する情報を把握します。また、シートベルトに組み込まれたセンシング技術により乗員の体格を推定し、その情報を活用して一人ひとりの状況に応じた保護の最適化を可能にします。

Software

ソフトウェア

ソフトウェアは、センサーから取得したデータを解析し、その時々の状況に応じて乗員拘束システムの作動をリアルタイムで最適化します。

System Integration

システム統合

エアバッグやシートベルトをはじめとする各種乗員拘束システムを統合的に制御し、連携させることで、状況に応じた最適な保護を実現します。

Connected Safety Intelligence

コネクテッド・セーフティ・インテリジェンス

共有されたデータや蓄積された知見を活用し、多様な状況に応じた安全性能の向上を実現します。

*SAFER HBM をはじめとする人体モデル(Human Body Models)は、さまざまな乗員条件における傷害発生メカニズムを詳細に解析するための知見を提供します。 これにより、多様な乗員に対応した適応型保護戦略の開発や検証が可能になります。また、研究では、集団の多様性を適切に反映するためには単一の基準人体モデルでは不十分であり、複数の人体モデルによる評価が必要であることが示されています。このことは、拡張性の高いシミュレーションアプローチの重要性を裏付けています。

モビリティの未来は、よりインテリジェントに、よりコネクテッドに、そしてよりパーソナライズされたものへと進化しています。安全技術もまた、その進化に歩調を合わせていく必要があります。

乗員状況認識安全技術(Occupant Situational Safety)は、状況を理解し、その変化に応じて継続的に最適化される安全システムへの転換を意味します。このアプローチは、現実世界におけるより幅広いシナリオや多様な乗員条件に対して、保護性能のさらなる向上を可能にする可能性を秘めています。

オートリブは、センシング技術、ソフトウェア、そして統合型乗員拘束システムの革新を通じて、この次世代安全技術の実現に取り組んでいます。より多くの命を守るためには、高い保護性能だけでは十分ではありません。一人ひとりの状況に応じて最適な保護を提供することが不可欠だからです。

* SAFER HBMはスウェーデンのチャルマーズ工科大学、オートリブ、ボルボ・カーズによって創設されました。現在はフラウンホーファー・チャルマーズ・センターが設立メンバーと連携しながら継続的に開発および市場展開を行い、安全性とイノベーションのさらなる進展に貢献しています。その後、社会全体の利益のために安全性とイノベーションを推進することを目的として、設立メンバー各社とともにフラウンホーファー・チャルマーズ・センターによって発展・製品化がすすめられ、市場へ提供されています。